手 紙

毎日でも手紙が欲しい!と言った相手が居た
本が大好きで、本なしでは一日も居られない人だった

耳が悪いので、電話よりも手紙の方が嬉しかったのかも知れない
介護の合間を縫い、時には寝る時間を割いてまで必死になって書いていた

自分の手紙を待っている人がいる!
自分の手紙を読んでくれる人がいる!
それだけの想いで

疲れた身体に鞭を打ち、腕の痺れに耐えながら
毎日、毎晩、パソコンのキーを叩いていた

毎日では、とても手書きなどしてはいられない
それでも、少しでも自分のの想いが届くように!と言葉を選びながら
毎日、相手の元に届ける為に

初めはそれも辛かった!
何故なら、まともに手紙を書いた事がなかったら 

そんな面倒の事は大嫌いだったし、書きたくなかった!
だって、電話の方が楽だから

でも、自分でも気づかない内に手紙書くのが楽しくなっていった
そして、いつしか悩みを忘れている自分がいた

例え、どんなに辛くても、例え、どんなに苦しくても
手紙を書いている間は忘れていられた

いつしか、頭の中で言葉が踊り始めた
まるで泉が湧き出すように、言葉が次々に浮かんでは消えた

まるで、洪水のように言葉が溢れ出した
そして、短歌が生まれ、詩が生まれた

大嫌いだった手紙を書いている内に、いつしか人生が大きく変わっていた

短歌から生まれた栞が、まるでタンポポの種のように、日本中へ飛んで行った
して、小さな、小さな種から、大きな、大きな歓びが生まれた

嬉しかった!元気になった!という声となって

そして、詩が生まれ、小さな、小さな輪が広がった
笑顔の輪が?