その一言が言えなくて
素直になれない。何故なのかどうしてなのか解らない。 とうしても素直になれない自分がいる。 別に意地を張っている訳ではない。 唯、素直にありがとう!と言えない。ご免なさい!と言えない。 本当は謝らなくてはいなけなのに。 本当はありがとう!と言わなくてはいけないのに。 何故か、素直になれない自分がいる。 そんな自分が時々嫌になる。 でも、どうする事も出来ない。どうしたら良いのか解らない。 誰かに何かをした時、ありがとう!と言ってくれなくて何で?と思う時がある。 それなのに、自分が何かをしてもらった時は、何故かありがとう!と言えない。 別に恥ずかしい訳ではない。 でも、言おうと思っても言葉にならない。 たった一言、ご免なさい!と言えばそれで済むのに。 たった一言、ありがとう!と言えばそれで済むのに。 その一言が言えない。 こころの中ではいつも思っているのに、どうしても言葉にならない。 たった一言、ご免なさい!と言えたら楽になるのに。 たった一言、ありがとう!と言えたら、何倍も笑顔が返って来るのに。 何故か、その一言が言えない。 ありがとう!ご免なさい!それだけで済むのに、何故か言えない。 本当は、自分では言っている心積でいた。 でも、相手のこころには少しも届かなかった。 何かをしてもらっても、その場ではなく、いつも後になってから有難う!嬉しかった!と手紙に書いていた。 それだけで、相手には充分伝わるものだと勝手に思い込んでいた。 でも、それは大きな間違いだった。 何故なら、その時には相手の気持ちは冷めてしまっていたから。 自分では相手に充分持ちが伝わっていると信じて疑わなかった。 でも、その時には相手の気持ちはどんどん自分から離れて行った。 少しも自分の間違いに気づく事なく、どうして何時もすれ違いになってしまうのか?と真剣に悩んでいた。 そして、自分の間違いに気づかないまま、相手だけが悪いのだ!と勝手に決めつけていた。 歳月が過ぎ、ふと気づいた時、自分にとって一番大切なものを失っていた。 友達という掛け替えのないものを。 例え、どんなに手を伸ばしても、もう二度と届かない。 例え、どんなに望んでも、もう二度と掴めない。 優しさと温もりという、人のこころは。 例え、どんなに想っていても、もう二度と振り向いてはくれない。 一度離れてしまった人のこころは。 もう二度とは戻って来ない。 今はただ、悲しみと空しさだけが胸を締め付ける。 たった一言、ご免なさい!と言えなかったために。 たった一言、ありがとう!と言わなかったために。 これは、私が知人の話を聞いて詩にまとめたものです。 その知人は今でもその事を後悔していると言いました。自分に対して本当に親身になってくれた相手なのに、何時も後足で砂を掛けるような事しかして来なかった事を。 一人で勝手に逆上せ上がって、言いたい放題の事を言って相手を苦しめ傷つけてしまった事を。 今になって気づいても手遅れだが、本当に自分が恥ずかしい!と言って。 |