耳に残る声

今もあの声が耳の奥に響く
教頭先生嬉しい!と叫んだあのボランテイアさんの声が
阪神の大震災の後、被災地で会った、あのボランティアさんの声が

名前も知らない、今では顔も覚えていない
それなのに、あの声だけが今日も耳の奥にこだまする

そして、その声によって私の人生は大きく動き出した

あの日、気づいた時は既に歩く事は勿論!立っているのもやっとだった
そんな姿を横目で見ながら、少しでも早く仕事を片付けるのに必死だった

やっと一段落した時、声を掛けて肩を抱き抱えてやっとの事で建物の中へ連れて行き、職員室の先生にお願いして長椅子を借りた

でも、本当は床にマットほ敷いて寝かせたかった
余にも狭すぎたから

後一息!そう思った矢先
突然!大声で泣き出した
多分、見知らぬ土地での思い掛けない親切に、思わず胸が一杯になってしまったのかも知れない

それでも、手を休める事は出来ない!
何故なら、私には時間がないから
僅かな時間を割いての、必死のマッサージだったから

その声に驚いて、先生方がやって来た
そして、一人の男性に向かって、教頭先生嬉しい!と言った
その一言で、皆が総てを了解した

その一言が、鬱に苦しみ、こころを閉ざすしかなかった私の胸に響いた
そして、その一言によって私の人生は大きく動き始めた

自分にも出来る事があるんだ!
自分でも人の役に立つ事があるんだ!と

次に日は目の回るような忙しさだった。それでも必死で働いた

自分を必要としている人がこんなにも居るんだ!という信念の元に

たった一言が大きな自信をくれた
鬱の苦しみに耐える力を

どんな苦しみにも耐えてゆこう!
どんなに辛くても我慢しよう!
きっと春は来るのだから!と

そして、長く苦しい日々に終止符を打った

今日も聞こえてくる
小さな事にくよよくするな!
お前を必要としている人達がいるんだ!と

まるで励ますように