私は交通事故で一月あまりの入院を余儀なくされました。複雑骨折の為、踵の骨に穴を開けられ、約一週間の間、錘を付けた状態でベッドに縛りつけられていました。
慣れないベッドに寝ているだけでも苦痛なのに、そんな状態でしたので、かなりのストレスになりました。
手術が終わり、やっと身体の自由が戻りましたが、一週間錘を付けて脚を引っ張っていただけで、膝がまったく曲がらなくなっていました。
手術が終わった翌日、車いすに乗るように言われましたが、直ぐに目眩を起こしてしまい30分も乗っている事が出来ませんでした。
その翌日からリハビリが始まりましたが、30分ほどで終わってしまいましたので、仕方なくロビーに出掛けていろいろな患者さんと話をしました。それは、誰かと話をする事でベッドに居る時間を短くする為です。
以前、病気で入院した時は歩けましたので、ロビーにポットと急須を持って行き、色々な患者さんとお茶を飲みながら話をしました。それは、病院の長い一日を少しでも短くする為の努力でした。
今回も同じように、出来るだけロビーに出掛けては長椅子の上で脚のマッサージをしながら暇つぶしをしていました。
そして、常に明るく振る舞い、時には短歌を書いた紙を渡して、落込んで居る患者さんを励ましたりして居ました。
然し、無理は何処かへ出るものです。
車いすに乗っている時、急に激しく 胸が痛んだので、これは無理をし過ぎて筋肉痛でも起こしたかな?と思い、急いでベッドに戻って横になりました。
それから1時間近く経ってやっと痛みが治まりましたが、その時は未だストレスが原因だとは思ってもみませんでした。
一週間ほど経って退院の日が間近に迫った夜の事です。消灯になり、ベッドに横になった途端!又しても激しい胸の痛みに襲われました。
別に何をしていた訳でもないので、一体何が原因なのかまったく解りませんでした。
いつものように仰向けになると、激しく痛むので、仕方なく横向きになって何とか痛みの治まるのを待っている内に、昼間の疲れが出たようでいつしか眠っていました。
前にも増しても激しい胸の痛みで目を覚まし、やっとの事でベッドに起き上がり、暫くそのままでいましたが、疲れたので横になった途端!またしても激しい痛みが襲って来ました。
そして、今度はゲップが出たかと思ったら、まるで胃袋が踊るように激しく動き出したのです。これはに驚きましたが、痛みの原因が解ったので一安心しました。
原因は、ストレスに耐えきれなくなった胃が反撃でした。その為、心臓の痛みと違う激しい胸の痛みを感じたのです。
やっとの事で車いすに乗り、ナースステーションへ行って、胃の薬を貰い、薬を飲んでから1時間近く経ってやっと胃が落ち着いたので寝ましたが、もう胸の痛みに悩まされるこ事はありませんでした。
私は一日も早く退院する為に、必死で努力していましたし、人前では決して辛そうな顔をしたり、愚痴も言わず常に明るく振る舞い、病棟で一番元気な患者を演じていました。
その事が却ってストレスになってしまい、胃袋が悲鳴を上げたのです。
それでも、歩ける時なら未だ良かったかも知れませんが、車いすにばかり乗っていたので、どうしても胃の働きが必要以上に鈍くなり、それらが引金となって、胃袋から反撃を受ける事になったのだと思います。
胃の痛みは退院してからも続きましたので、薬は一日も欠く事が出来ませんでした。
そんなある日、整体でその話をしたら、大根おろしが胃に良いと言われ、早速、その夜から小鉢に山盛りに作ってもらいました。
夕食が終わった後、いつもなら胃の薬を飲むのですが、何となくいの調子が良いので、その夜は飲まずに寝ましたが、少しも胃の痛みを感じる事はありませんでした。
薬を一週間飲み続けても治らなかった胃の痛みが、大根おろしを食べていただけで3日で良くなるとは思ってもみませんでしたが、野菜の持つ優しさが身体に合ったかのも知れません。
それと同時に、家に戻って来た事で、ストレスが少なくなったのもひとつの理由だと思います。
ストレスというのは本当に恐ろしいものです。
|