ホームレスの彼

 私は昼休みの散歩の時に近くの河原を歩きます。理由はあまりアスファルトの上を歩きたくないのと、花や鳥、虫たちとの出会いがあるからです。

 夏も終わり掛けたある日、ひとりのホームレスの男性と出会いました。その数日前に土手の上で昼寝をしているの見掛けたので、すぐに解ったのです。

 川に足を浸けているを見掛けたので、少しだけ話しをしました。それから数日して、今度は橋脚の下で週刊誌を読んでいたので声を掛けました。それは、以前と比べて何となく疲れた顔をしていたので、気になったからです。

 何処か具合でも悪いんですか?と聞くと、此処では夜中々眠れないんだ!と言いました。橋脚の下では当然だな!と思いましたが、膝が痛くて困る!と言ったので、少し脚を診てやる気になったのです。

 脚に触った途端!顔をしかめたので、お兄さん足が熱くないかい?と言うと、足がボカボカするので、この間も川に足を浸けていたんだ!と言いました。

 私の思った通り、冷えがかなり進行してしているので、結果として足が熱くて困る!という状態になったのです。

 私が何も聞かないのに、今ここで寝ているんだが、こんな処では落ち着いて眠れないと言いました。この人は53歳だと言いましたので、私より5歳年上です。

 以前、警備会社にいたがリストラされてしまい、今はフーテンをやっているんだ!と、遠くを見詰めながらポツリと言いました。

 膝の痛みを和らげる方法を教えた後、「今だけ、今日だけを見詰めていないで、明日を見詰めて生きて行く方が良いかもしれませんよ!」と言うと、全部読まれてしまっているね!と言って苦笑いしました。

 最初は痛がって顔をしかめていましたが、次第に痛みが消えたようで、足が軽くなった!と言って喜んでいました。

 以前、自転車に乗っている時に突然!目眩を起こして、土手から水路に落ちかけた事があると言ったので、少しでも歩く事を勧めました。

 それから一月あまり経って、偶然!出会った時は、以前と比べて見違えるほど元気になっていました。

 以前と比べて元気な様子なので、少しは体調が良くなったのかな?と思っていると、前には大変お世話になりました。お陰様で、あれ以来毎日マッサージをしているので膝の痛みは無くなりました。

 それに、海岸へ行っては砂利や砂の上を歩いているので、以前に比べて体調が良くなりました。と言ったので、私の方が戸惑ってしまいました。

 ホームレスの人と話をしたのもこの人が初めてでしたし、またマッサージをしたのも初めてです。 
 
 それでも、この人のお陰で、ホームレスの人達に対して、偏見を持たなくなったのも事実ですので、私も良い勉強になりました。