命を拾った脚のツボ 

 脚には昔から三里の灸ツボと言われている大切なツボが、あります。

 私は以前、山手線の車内で心臓発作に襲われた事があります。それまで何事もなかったのに、突然、心臓を締め付けられるような激しい痛みに襲われ、同時に殆ど呼吸が出来なくなってしまいました。

 折り悪く、私の乗った電車は終電で車庫に入るため、乗客は私を含め数人しか乗っていませんでした。ですから、誰一人として私の異常に気づいた人は居ません。

 その時、此処で死ぬ訳にはいかない!という、強い想いが脳裏をかすめました。此処で死んではいけない!死ぬ訳にはいかない!と。

 そして、薄れ行く意識の中で、必死になってその日の行動を振り返ったのです。その時、ふと、左脚が異常なくらい熱くなっているのに気づきました。

 その時、日頃、殆ど歩く事がないのに、久しぶりに東京へ出て来たのでつい嬉しくなって歩き過ぎたのが原因だと気づいたのです。

 それで、思い切って、燃えるように熱くなっている中心を、思い切り強く押してみた処それまでの痛みが一気に消えてなくなったばかりか、呼吸も楽になりました。

 助かった!それだけでした。

 そして、列車が目的の駅に着くまでの間、例え指が折れても良い!とばかりに、押し続けていたのです。

 やっとの事で電車を降りて、ホテルに着くまでの間、歩いては休んで押し、少し歩いては押し、という繰り返しでやっとの事で自分の部屋へ戻る事が出来たのです。

 部屋に戻ってからは、ベッドに足を投げ出して、脚の熱が完全に消えるまで、必死になってマッサージを続けました。

 そのお陰で、1時間くらいで何とか元の状態にもどりましたが、その晩は不安で一睡も出来ませんでした。

 お陰様で、それ以来、一度も心臓の発作に襲われる事はありませんが、改めて脚の恐さを知りました。

 自分自身にマッサージの技術があったからこそ、何とか命拾いしましたが、そうでなければ、今頃はどうなっていたか解りません。