歩 く 

歩き始めてから一体、何年になるのだろう?

ふと、そんな事を考える時がある

最初は歩けなくなっている自分に慌てふためき

何とかしなくては!と、必死になって歩き始めた
 
始めは、まるでカタツムリが這うようなゆっくりとした歩みでしかなかった

普通の人なら僅か5分で辿り着くのに、15分も掛かってしまった

そればかりか、着いた途端!息が切れて動けなくなってしまった

そんな事を繰り返している内に、ほんの少しづつ歩けるようになっていた

歩けなくなっている自分に気づいた時は46歳だった

自分ではもっと体力があると思っていた

然し、現実に歩けなくなってしまった以上、迷っている時間はなかった

例え、何があろうと、自分の足で歩くしかなかった

そして、月日が流れ、いつしか周囲が驚くほど足早に歩いている自分がいた

55歳になった今、誰が見ても颯爽と歩いている自分がいる 

歩けなくなって落ち込んでいた頃がまるで嘘のように 

道の脇に咲く花を眺め、鳥の声に耳を傾け、それでも歩みは止まらない 

別に何をしたい訳ではない

ただ、歩く事が楽しいだけだ 

陽の光りを浴びながら、額に汗して歩いているだけで何故か浮き浮きしてくる

時々、行き交う人に、こんちにちは!と声を掛けながら

あの頃の自分は一体どこへ行ってしまったのだろう


今は遠い昔のような気がする

見知らぬ街を歩く、今日も、そして明日も

我が街と呼べる日が来るのを夢見て